ピレスロイド系殺虫剤の危険性と安全性の理由について

殺虫剤にはピレスロイドという成分を含んだ製品が日常生活で多く使われています。
ピレスロイドとはどんな成分の薬物質なのか。

殺虫剤を吹きかけると、すぐに虫が死んでしまう姿を見て、不安に思ったことがある人もいると思います。

人間に対しては安全なのか危険なのか、簡単にまとめてみました。

(参考にした資料は、主にネットの情報です。企業系、医療研究系、用語系、財団系。詳細が気になる方は専門サイトでお願いします)

ピレスロイドはなぜ危険な殺虫成分なのか

ピレスロイドとは、除虫菊(白花虫除菊)という菊に含まれている有効成分(天然ピレトリン)の総称、または、それらに似た構造の合成化学物質(合成ピレスロイド)の総称のことです。

ずっと昔から除虫菊は殺虫剤の原料として使われてきたものです。

日本においては、1890年(明治23年)に大日本除虫菊(金鳥、キンチョー)創業者の上山英一郎さんが、除虫菊を応用した蚊取線香を発明し普及したことで、殺虫剤の成分としてピレスロイドが広まりました。

100年以上も前から使われてきたことを知ると、すごく歴史があるなと感じます。

近年に一般的に使われているのは、天然ピレスロイドの構造を元に発明された合成ピレスロイドです。

合成ピレスロイドは多くの種類があり、それぞれの殺虫剤の用途に合った性質のピレスロイドが使われるようになっています。

ピレスロイドの作用については未知の部分もありますが、中枢および末梢神経系に作用し、ナトリウムイオンチャネルを撹乱させて正常な神経伝達を阻害すると考えられています。

ピレスロイドは昆虫の体内に入るとすぐ神経系に作用して、反復興奮による異常興奮および興奮伝導の抑制を起こし、痙攣、麻痺に陥らせます。

上記のような作用を持つので、ピレスロイドは虫にとっては危険な神経毒であり、ピレスロイドは殺虫剤として高い効果を発揮する理由になります。

ちなみに、ピレスロイドの毒性は昆虫類・魚類・両生類・爬虫類に対して大きいので、これらの飼育をしている人は使用しないのがいいと思います。

ピレスロイドが人にとって安全とされる理由

ピレスロイドが人にとって安全とされる理由は、極めて高い選択毒性にあります。

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選択毒性とは、特定種類の生物にとってのみ致命的な毒性を発揮する性質のことです。それぞれの生物の身体の代謝の仕組みの違いから毒となるものに違いが生まれます。

例としては、タマネギが犬や猫に危険であったりします。

ピレスロイドの場合は、虫に対しは極めて危険な毒である一方で、温血動物にはほとんど無毒という、家庭用殺虫剤として理想的な特長を備えているということになります。

ピレスロイドは人などの温血動物(哺乳類、鳥類)の体内に入っても、酵素の力で速やかに分解代謝されます。

そして、人の身体は昆虫と違った複雑な神経系のため、中枢神経に作用する前にほぼ解毒されてしまい、毒性を示さないというわけです。(哺乳類・鳥類の受容体に対する毒作用は無いと書いてある記事もあります)

また、ピレスロイドは空気・熱に触れると分解しやすい性質を持っていて、虫除けとして効果を発揮した後は残留や拡散をしにくく自然と分解されます。

これらの理由から、ピレスロイドは人にとっては安全とされています。

 

殺虫剤の多くにピレスロイドが使われる理由

家庭用殺虫剤として使用されている有効成分としては、ピレスロイドが90%以上を占めているそうです。ほとんどピレスロイドですね。

殺虫剤にピレスロイドが多く使われる理由は、その殺虫効力の以下の特徴からです。

  • 安全性が高い。
    上記のとおりに、選択毒性と、環境にも残量しにくい性質からです。
  • 速効性であること。
    微量でも害虫によく効き、速い効力を示します。
  • 忌避効果があること。
    害虫を殺すだけでなく薬剤濃度の薄い場所では害虫が嫌って近付いて来ないです。
  • 追い出し効果があること。
    家具の後ろに隠れている害虫に噴射すると明るいところに飛び出してきて死にます。
  • シネルギスト(協力剤)配合での効力増強
    製造や効果の細分化がしやすいです。

上記の特徴は主にKINCHOの企業サイトを参考にしたものです。
(不思議に思ったことは、分解されて環境に残りにくいということと、忌避効果で薬剤濃度が薄く残るという、一見して反対に思えることが書かれていることです…)

ピレスロイドは本当に安全なのか

ピレスロイド系は昔から使用され続けられてきた殺虫成分です。改良もずっと続けられてきます。

日本において家庭用殺虫剤は、薬事法に基づいて、医薬品や防除用医薬部外品の承認を受けなければ製造販売はできません

なので安全性に関して、急性毒性、遺伝毒性、刺激性、アレルギー性などの数多くの安全性試験結果から、厚生労働省が厳しく審査を行い、一般の人が使用しても安全であることが確認されたものだけが製品化されています。

なので、用法用量を守って使用していれば一般には安全だと思います。

・アレルギー体質の人は使用に注意すること
・締め切った部屋で長時間使用せず、換気の良い場所で風上に置いて使用すること

私も生活でピレスロイド系殺虫剤を使用していても特に障害が起きたということはありません。

小さい部屋で無香料透明で空間に広がるタイプの殺虫剤を、ずっと換気せずにつけっぱなしにしていた部屋に入ったときに、気分が悪くなったことがあるくらいです。

ただ、慎重に考えれば、安全性試験と違う条件下においての安全性は保証されているわけではありません

個人の体質や環境は千差万別です。

ピレスロイド総論というサイトに限った話ではないですが、ピレスロイド使用による悪影響ではないかという事例も報告されています。

神経過剰刺激、神経過敏症、発達中の神経への影響、受容体の変化などなど、危険性について書かれている記事は探せば出てきます。

人体に入ったピレスロイドは、代謝されて尿中に3-フェノキシ安息香酸(3-PBA)として検出できます。

フランスのレンヌ大学病院の研究では、
数百人の母親とその子どもを対象として、
妊娠中と子どもたちが6歳の時の尿中の3-PBA濃度を測定し、
それを基にピレスロイド曝露量を測定しています。

さらに、
6歳時の子どもたちの行動を評価した研究です。

その結果、
ピレスロイドと行動障害との間に関連が認められています。

特に、
妊娠中の母親においてピレスロイド系化学物質の尿中濃度が高い場合は、
子どもの内在化問題行動のリスクが高くなり、
子どもにおけるピレスロイド系化学物質の尿中濃度は、
外在化問題行動(反抗的・破壊的な行動)のリスク上昇に関連していました。

全体として
3-PBA尿中濃度が最も高かった子どもたちは、
異常行動がみられる可能性が約3倍高いという結果になりました。

色んな国で色んな研究がされています。

ピレスロイド使用についてのまとめ

一般の使用者からすると、その化学製品が安全かどうかの実際のところは簡単には知れないと思います。

製品を売る側の企業が自社製品にとってマイナスになることをわざわざ大きな声で言うことはないでしょうし。国だって大きな問題に発展でもしなければ問題視はしないでしょう。

結局、どんな製品にしろ自分たちが使うときに、どの情報を信用するのか、どこまでのリスクを許容するのかを自分たちで判断するしかありません。

殺虫剤に関して調べた限りで、個人的には、普通に使う分には問題なさそうだけど、吸わないようにしよう、換気は十分にするようにしよう、成長スパートが終わっていない子どもがいればその子の前では使わないようにしようと思いました。

 

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