単価を上げるための単価交渉は、エンジニアとしての価値を感じられる場面の一つであり、エンジニア職の楽しみだと私は思っています。
ということで、私はどの開発現場にいても、単価については自分のことだけでなく他人の単価も必ず気にしています。
「一緒の場所で働いている他のエンジニアの収入はいくらなのか? 単価はいくらなのか?」と。
自分と同じくらいのスキルのあのエンジニアの収入はいくらなのか?
自分では及びもつかないすごいスキルのあのエンジニアの収入はいくらなのか?
天下の大企業にいるあのエンジニアの収入はいくらなのか?
なぜ他の人の単価まで気にするのか、その理由は、どれくらいのエンジニアスキルにどれくらいの単価なのか単純に気になりますし、自分の収入を上げるためにはどうすればいいのかを探るためです。
どういう人が高単価を獲得しているのか、その傾向を知ることで自分の向かいたい方向性が多少は見えるかな、単価交渉の方法を思いつくかなと考えていました。
この記事はブラックIT業界の底辺にいる弱小エンジニアが、IT業界のSES界隈で単価交渉するためにした方法論をほんの少し書いておきます。(SES界隈:システムエンジニアリングサービス。派遣エンジニアが他社の開発現場に常駐して働くという体制のIT業界の中の領域)
会社勤めのエンジニアよりもフリーランスエンジニア向けの内容かもしれません。
目次
単価を上げる要因と単価交渉の方法の概要
まず、単価を上げる要因と単価交渉の流れについて、大まかに説明します。
【エンジニア価値:単価要因】
エンジニアの価格相場を知ること。
自分のエンジニアの価値を認めてもらうこと。
価格相場と自分の価値から算出した単価を提示すること。
【案件予算:単価要因】
案件の予算具合を知ること。
相場から考えて低い単価しか支払わない案件からは手を引く。
これだけです。これを繰り返すだけです。
単価を上げる単価交渉の成功失敗を決定づけるのは、自分にエンジニアスキル価値がどの程度あるのか、案件に予算があるのかの2点で決まります。
そして、エンジニアが単価を上げようとするなら、やることは実質2つだけです。
エンジニアスキルを上げるということ。これは当たり前のことで、大事なことですよね。
そして、情報収集を少しだけしておくことです。
これって、別に時間もかからなし、労力もいらないのに、IT業界に入ったばかりの私の周りではなぜか意識してやっているエンジニアが少なくて、私はすごく驚きました。
この記事では、エンジニアスキルを上げる方法じゃなくて、エンジニア価値を認めてもらう方法と情報収集して単価交渉する方法について書きます。
エンジニアの価格相場を知るための情報収集
私はIT業界において社会的な立場のない、名もなき弱小エンジニアですので、業界情報が自然と知れません。口と足を動かすのが情報取集の基本です。
そこで、どうやってエンジニアの価格相場を知ればいいのかという方法について、私がやったこと、やった方がいいと思うことを書きます。
開発現場のエンジニアに聞いて回る
機会があれば、私は自分が参画した開発案件で知り合ったエンジニアの人たちの収入を聞いて回るようにしています。
「どうやって聞いて回るんだよ」って思う人もいるかもしれませんが、常に意識していれば、日常会話のちょっとしたタイミングで聞けることができるときがあります。
「あー、給料があがらないわー」
「ボーナス、何に使おうかなー」
「ようやく給料日だー」
とか、こういうワードを相手が発したタイミングで、私だったら話題を広げていって、気軽に収入を聞こうとします。
話の流れでふと気になったので、なんとなく聞いてみましたって感じで聞いてます。
あるいは、現場で仲の良くなったエンジニアたちと食事に行ったときに、お金のワードを誰かが発したタイミングで、いい感じの雰囲気でみんなのテーマとしてなるように話を切り出すようにしています。
「どのくらいの単価なんですか。後学のために教えてください。お願いしますっ!」
「しょうがないな、教えてやるよ。○○だ」
「えー、そんなにもらってるんですか!?」
「さすが大企業は額が違うなー!?」
「自分は中小だから◯○くらい」
「いや、もらってますし。さすが高スキルは高単価でうらやましいなー!」
「えっ、自分は○○しかもらっていないんだけど」
「うわっ、マジすか!? 高いスキルをお持ちなのに、それは悲しい」
みたいな感じで、お酒の場であれば、収入ぶっちゃけトーク大会になって、盛り上がって楽しかったりします。(エンジニアメンバーのノリにもよりますが……)
みんな他のエンジニアがどれくらいの稼ぎなのか、興味を抱いているんだなってことを実感したことがあります。
情報収集のための行動が現場での自分の評価が上がる行動に結びついていることもあります。
(わかりやすい例を一つ上げると、開発現場のエンジニアたちと仲良くするコミュニケーション力があると判断されることがあります)
開発現場で取り組める情報集ははやっておいて損はないです。
エージェント会社の募集案件を見ておく
エージェント会社は、それぞれの会社が保有している案件のうち一部を公開していますので、どれくらいのスキルがどれくらいの単価なのかの目安になります。
登録しておかないと見れない案件情報が多いエージェントもあるので、自分が興味を惹かれる案件が多いエージェント会社には登録しておきます。
登録しておけば、メールでも案件情報が流れてくるので(エージェント会社によっては条件がありますが)、ちょっとした時間でエンジニアの価格相場を知ることができます。
実際にエージェントで案件の説明を受けたり、(参入するかどうかは別として)案件の面談もして、情報収集をしてみたこともあります。
ネットだけではわからない情報や、実態はどうなのかを知りたいときは足を運びます。(これは面倒なので、一度やって知れれば十分です)
多くの案件を取り扱っているエージェント会社で、経験年数が長くて業界に詳しくて、多くの案件、エンジニアを担当していて、親切なエージェント(営業マン)に話を聞くことができると、駆け出しエンジニアや単価を気にしなことがないエンジニアにとっては、とてもありがたい情報を多く聞くことができます。
会社情報・採用情報・転職情報を見ておく
これは私のようなヒマな人向けの行動になると思います。
自分の携わる開発案件において、発注元から商流にある会社の採用情報、転職情報は見ることがあります。
募集内容から、どの程度のエンジニアスキルがどれくらいの給料になるのか、この開発現場でもらえている自分の単価は妥当なのかの判断基準のひとつにします。
リアルな体験(飲み会などで聞いた情報と照らし合わせてみたりする)と採用情報に書かれている内容が結びついたりするので面白いです。
SNSをやる、エンジニアのコミュニティに参加する
人見知りの私はできていませんが……。
Twitterなどでは、エンジニアで率直な自分の経験を書いている人がいます。そういう人に聞いてみるというのも手だと思います。
エンジニアの集まるコミュニティに参加して、仲良くなった人に聞く。きっと、これが一番だと思います。
案件予算を知るための情報収集
私のような底辺にいる人間だと、予算情報は知ることは難しいです。
お金を出す側としては、隠したい情報なので、(堅い場で)予算について聞いたとしても取引先の人の話が本当かどうかもわかりませんし……。
「予算が厳しいから……」
と言われたことが、実は他の原因だったと、違う人経由で知ってしまうなんて悲しい経験をしたこともあります。
聞き出すとしたら、予算のやりくりをしている人と飲み会の場などで個人的に仲良くなって、それとなく聞いてみるというのがいいとは思います。
私はフリーランスとして働いていますので、取引先の予算までは気にしていないというが正直なところです。(会社勤めで複数エンジニアを率いているという立場の人は聞くべき情報だと思います)
聞いて答えてもらえたところで本当のことかはわからないですし、聞いたところで自分の努力でどうにかなるわけでもない事柄だと考えているからです。
会社情報を見たり、開発現場の雰囲気を見たりして、この案件にかける資金が潤沢かどうか、テキトーに考えるくらいです。
自分の判断した価格相場、希望単価額を提案して、OKだったらいいし、NGだったら他の(予算がある)現場に移ればいいくらいの気楽な気持ちでいます。
自分のエンジニアとしての価値を認めてもらって、提示する
エンジニアが自分のスキル価値を判断されるタイミングは4つです。
- 参画時の面談
- 現場での働き
- 契約更新時の話し合い
- 転職時の面接
参画時の面談
参画時の面談では、経験年数やスキルシート、面談時の会話スキルによって、単価が決まります。
これは、経験年数が短い人や口下手は不利です。(私のことです)
上述した方法によって集めた情報を元に単価交渉する場所です。
価格相場を知っているならば、割に合わない額を提示されたなら、別の案件を探すというアクションが取れます。
実際に相場に沿って探していれば、自分のスキルに見合った妥当な単価の案件に入れます。
現場での働き
現場で評価されるように、頑張って働きます。
ここが一番大切なことだと思います。
現場での働き、スキルアップがエンジニアの本分ですし、今後の単価交渉に活きてきます。
(働き方の例は、エンジニア価値を高めるための行動を読んでください)
(フリーランスエンジニアであれば)自分スキルアップ、現場評価の高まりが、そのまま収入アップに直結することを身をもって体験するので、(定時内で)頑張る人が多い印象です。
契約更新時のやりとり
期間にもよりますが前回と同じ額を提示されたら、私は少しでもあげるように交渉します。
このときは、同じ現場で働いているエンジニアがどの程度の単価で働いているのかの情報を知っている状態で単価交渉すると強い場でもあります。(一応は、発注元から商流の予算の流れも頭の片隅に思い浮かべておきます)
転職時の面接
エンジニアが転職という手段を取るときも、面談時や単価交渉時のときとやることの本質は変わらないと思います。(経験していないので、私にはわからない領域です)
エンジニア価値を高めるための行動
同じ開発案件で引き続き仕事をする場合の契約更新時に備えて働くときについて、書いておきます。
単価交渉をするための交渉材料は、エンジニアとしての価値が高まったのかどうかです。
自分が最初に現場に入ったころよりも現場での貢献度、生産性が増しているということを、相手に伝えられるレベルで、相手に評価されるレベルで現場で実践することが大切です。
内容はなんでもいいと思います。
「ただのメンバーとして入ったのに、いつの間にか他の人のレビューなど面倒まで見ているようになっている」
「当初は自分の担当分を終わらせるのだけで手一杯だったのが、早く終わるようになって他の担当もするようになっている」
「現場で問題視されていたことを、自主的に解決策を提案し実行し改善した」
などなど。私の経験上だと、
「プロジェクトを成功に導いた」
「資格に合格した」
みたいなカッコイイことじゃなくても、開発現場で感謝されること、評価されることをして、主張すれば、単価は上がるなと感じました。そういったことをしようと思えば、自然とスキルレベルは上がっていくと思います。
なので、私は開発現場で働くときは、自分が現場にいて欲しい人材と思ってもらえたらいいなと考えながら働くようにしています。
単価交渉したときの実例
私は現場に入って、2か月目の契約更新をするタイミングで単価交渉をしたときのことです。
同じ現場に、自分よりも経験歴が長いけど、生産性は変わらないよねというエンジニアがいたからです。
「月に4万円くらい単価を上げてください」とニコニコペコペコして交渉してみました。
私は自分の希望額が高いとは思っていなかっので、先ほど書いたような理由をいくつか添えて、はっきりとペコペコしながら自分の要求を伝えました。
言うだけならタダですし、失敗しても他の開発案件を探せばいいだけだと考えていました。
何事も言ってみるもので、結果としては自分の希望通りの単価になりました。
また、色々とタメになる経験をさせてもらうことにもなりました。
月4万円増えるということは、私のような初心者エンジニアにとっては嬉しいことでした。
単価交渉というか商流上げ
これは単価交渉というよりも、商流交渉というか商流上げになるのですが、収入を上げるという面では同じなので私の経験を書いておきます。
詳細は省きますが、事情があって私は商流を上げたことがあります。
もちろん、法的な契約内容や人としての義理人情を考慮しての行動でした。
(まれに商流を上げることが役割みたいな人がいるので、そういう人と話をする機会があれば、参考にどうやって商流を上げているのか聞いておくとよいと思います。SES企業:エンジニア派遣会社のこと)
システム開発会社には、また新たに人を探すのが面倒だし、それくらいだったら人柄も実力も知っていて、便利に使えるエンジニアがいるなら、そいつに直に仕事を出そうと考えてくれる会社もあります。
そうなると、なんやかんやで商流が浅くなったります。
自分の能力はまったく変わっていないのにも関わらず、それだけで一気に年収は100万円ほど増えました。
「はわわー!」ってアホな気持ちになって、働く上でのモチベーションも少し上がりました。
そして、報酬面でのメリットだけでなく、報告連絡相談などの事務的なやりとりもスピーディーになりました。
働く場所って大切だよなと、切なくも思った経験です。
単価交渉の方法についてのまとめ
私は能力も低いし努力もできない人間なので、一流のエンジニアになれることはないだろうと考えています。
でも、エンジニアを純技術者として捉えるのではなく、エンジニアをビジネスマンとして捉えて、自分のできる研鑽(ラクそうな箇所だけ)はしていこうと思っています。
そんな考えの私は、どの立場にいるエンジニアでも、単価交渉みたいな交渉事は避けるべきではなく、チャンスがあるなら経験しておいた方がよいと考えています。
交渉することで初めて見えてくるものがあると思うからです。
自分のエンジニアとしての市場価値だったり、現場で関わる人たちとのコミュニケーションだったり。
単価交渉の基本は、情報感度を少し高めておくこと。普段の会話で少し意識して情報収集をしておくこと。これだけです。
これって、プログラミングスキルを磨くよりも、はるかに労力が少ないです。というか、隙間時間でできることです。
そして、一度できるようになるとずっと使えるものです。
単価を上げたい、収入を上げたいと思っている人は意識してみてください。
経歴も実力もない初心者エンジニアなので、大した経験は書けない身ですが、少しでも駆け出しエンジニアの参考になったのなら幸いです。